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『アンランダン』書店用ちらし(詳細)

ちらしだけに掲載された原作者と訳者のコメントを載せておきます。


★ミエヴィル・コメント(インタビューより)

「ファンタジイ小説を書くとき、ぼくがたいして苦労もせずに思いつくのは、グロテスクなものとか、ふしぎなものとか、モンスターたちだ。なにしろ、そういう奇怪な存在こそが、ぼくをこのジャンルに引っぱりこんだいちばんの要素だからね。それ以外の、ストーリーとか登場人物とかいったものについては、やっぱり苦労してつくりあげなければいけないけど、奇怪なものはすごく簡単にできあがる。
 むしろ問題は、ぼくがモンスターをもっと出したいというだけの理由で創造してしまった連中のことだ。どんなにそいつを気に入っていても、物語の流れに関係がなかったら、ほかの作品のためにとっておくしかない。『アンランダン』でうれしかったのは、ほかの本では使えなかったモンスターたちに出番をあたえられたことだ。
 たとえば、ほんのちょっとだけ出てくる頭がインク瓶になってるやつ。いくらファンタジイ小説がなんでもありの世界だとはいっても、さすがに理屈に合わないと思われてしまう。SF小説でもむりだろう。この本でああいうへんな連中について書くことができたのは最高に楽しかったよ!
 最近になって、五歳のときに描いたスケッチを見つけたんだけど、そのモンスターたちがいま描いているのとほとんど同じだったのにはちょっとおどろいたね。根っこのところはなにも変わっていないらしい。『アンランダン』に登場するバケツ忍者だって、ぼくが十歳のときに思いついたやつだ。四半世紀たってようやく、こうして本のなかで活躍させることができたというわけさ」


★翻訳者・コメント

「いちばんの読みどころは、やはり、つぎつぎと登場する異世界の奇怪なキャラクターでしょう。本をぱらぱらっとめくって作者自筆のみごとなイラストを見てください。こどもの悪夢に出てきそうな、へんてこりんな連中のオンパレード。特に気に入ってるのは、頭が鳥カゴ(小鳥入り!)になっているヨリックとか、いつも潜水服を着ているムレルあたりですね。物語の終盤にムレルの真の姿があきらかになったときには、ほんとうにおどろかされました。
 翻訳者から見てなにがすばらしいかといえば、作者の”ことば”に対するこだわりですね。おかげで翻訳は楽しくも苦しい作業になりました。どうやって日本語にすればいいのかぼうぜんとしてしまうような、だじゃれやことば遊びがぞろぞろ出てきます。中盤で登場するおしゃべり大王は、口にすることばがどんどん異様な姿の生き物になるというとんでもないやつでした。よく”ことばに命を吹きこむ”とかいいますが、ほんとうに命をあたえてしまっているわけです。その音像子(おんぞうし)たち――この訳語にも苦労しました――は、魔法使いとの闘いで思いがけないかたちで活躍することになるんですが、それは読んでのお楽しみです。
 ひょんなことから異世界にまぎれこむ少女に、ことば遊びとくれば、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を思い浮かべる人が多いんじゃないかと思います。でも、舞台となる裏ロンドンの雑然としたエネルギッシュな雰囲気は、むしろ宮崎駿監督の〈千と千尋の神隠し〉のほうがイメージ的に近いかもしれません。とにかく、訳していてこんなに楽しかった本はひさしぶりでした」

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