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『ジャック・グラス伝』はちゃんとSF

『ジャック・グラス伝』を読んでいると、突拍子もない大ネタやトリックに目を奪われがちですが、細部はきちんとSFしています。たとえば重力の扱いです。

第二部以降の主役のひとりである、15歳の富豪令嬢で殺人ミステリが大好きなダイアナさん。彼女はふだんは宇宙空間にある大邸宅で暮らしていますが、そこには安易な“重力発生装置”などというものは存在しません。従って、遠心機を使った訓練を日々おこなって体を慣らしておく必要があるのですが、若くて愚かなのでもちろんそんなものはサボっています。

そのため、16歳の誕生パーティのために地球の別荘地へおりたときには、1Gの重力のせいで、歩行器をつけなければ歩くこともできず、常に息も絶え絶えというありさま。

さらに、殺人現場となった倉庫の中ではこんなやりとりが――

「これを見て」ダイアナは興奮して言いながら、つま先で床にカギ括弧を描いた。「これがなんだか知ってる?」
「床ですが、お嬢さま?」
「ほこりよ! 読んだことがあるわ――こまかな粒子状の物質。ふつうは空中にただ浮かんでいるけど、ここみたいに重力があると、下へ落ちて……堆積するの」

まるで新たな物理法則でも発見したかのように解説し、得意満面で推理を披露するわけですが、このあと彼女がどんな恥をかくかは読んでのお楽しみ。

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